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WBS-その2

 前回はPMBOKの「プロジェクトスコープマネジメント」の知識エリアの手法で
 ある“機能WBS”を取り上げました。そこで、今回は、この機能WBSと対で論じ
 られる「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの手法である“作業WB
 S”を取り上げます。
 作業WBSはプロジェクトを作業の観点で展開して、作業の定義をする手法です。
 PMBOKでは作業の展開レベルに名称をつけています。最上位を「プロジェクト」
 としますと第1次の展開レベルを「工程」、次の下位レベルを「アクティビティー」、
 さらにその下位を「タスク」という具合です。
 この作業レベルWBAを一般的な業務のシステムかの作り込みシステム手法である
 ウォータフォール型の開発ステップを例にとってご説明してみましょう。

(1)作業WBSの言葉の定義
 「工程」には“計画”、“要件定義”、“基本設計”、“詳細設計”、“開発・テス
 ト”、“移行”といった各フェーズが該当します。
 「アクティビティー」は「工程」の下位層の活動です。基本設計の工程を例に取り
 ますと、その下位のアクティビティには“工程の計画”、“システムの機能仕様の作
 成”、“適用業務フローの作成”、“入出力仕様の設計”、“データファイルの論理
 設計”等などがあります。
 アクティビティの下位レベルの「タスク」は“作業”と訳します。PMBOKでは
 タスクを最小単位の成果物を作成する作業としています。
 たとえば、アクティビティーの“データ論理ファイルの設計”をタスクへ展開します
 と“データファイルの論理関係定義”や“データファイルの論理構造定義”、“デー
 タベースのセグメント定義”などが定義されます。
 このタスクレベルでは具体的な「データファイルの論理関係定義書」、「データファ
 イルの論理構造定義書」、「データベースのセグメント定義書」といった成果物が作
 成されるのですから、その作成工数を見積もることが出来ます。
 この工数を的確に掴み、見積り積み上げることでプロジェクトの全体工数が把握でき
 ます。
 このタスクの工数の捉え方にPMBOKではCA(=Cost Account:
 予算単位)という言葉があります。
 “さて、CAとは何でしょう。”

(2)CAとは
 CAとはCost Account、予算単位です。言い換えますと、予算を管理
 したい成果物の作業単位です。
 作業単位ですから、この作業単位を新人を割り当てる場合とベテランを割り当てる
 場合とで大きく工数は変化します。先にあげた成果物である「データファイルの論理
 関係定義書」を例にとってみますと、
 新人ですとこの定義書を作成する前に“論理DB研修受講”、“先輩の指導・レビュ
 ー”などの事前作業があって初めて、与えられた定義書を作成できるようになりま
 す。
 すなわち、新人ではCAを見積もるには3ステップの作業とその工数が必要になりま
 す。このCAを成し遂げるための作業をPMBOKではWP(=WorkPacka
 ge:成果物のための最小作業単位)と言います。
 作業WBSの作業展開はプロジェクトマネジャーとして管理したい単位ですからCA
 として括った成果物までとなり、このWPは日常の管理をするグループ長とメンバー
 との管理対象とPMBOKでは定義しています。
 このCAが作業のスケジュールやコストの予実管理に用いられます。
 このタスクレベルの作業には作業の前後関係があります。この前後関係に作業期間を
 捉えてプロジェクトスケジュールが出来上がることになります。

 第68回はここで終了します。「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの
 手法である“作業WBS”を取り上げました。
 次回は、同じく「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの手法である
 “PERT/CPM”を取り上げます。

PERT/CPM-その1

 前回は「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの手法である“作業WB
 S”を取り上げました。今回からは、同じ「プロジェクトタイムマネジメント」の
 知識エリアの手法である“PERT/CPM(Project Evaluation Review 
 Technique/Critical Path Method)”を採りあげます。

 プロジェクトのスケジュールは作業WBSで作成したCA(=Cost Accou
 nt)のアクティビティやタスク(=日本語訳は作業です。これ以降の表現では作業と
 いう言葉に置き換えます)を利用して作成します。スケジュールを作成するのですか
 ら、作業の前後関係を把握することが必要になります。
 このような作業の前後関係を把握する手法としてネットワークロジック図がPMBO
 Kでは紹介されています。
 ネットワークロジック図は作業の前後関係、言い換えれば従属関係を把握して作業の
 順序付けをしスケジュール化する表記法で、表記の違いからPDM法(=Presi
 dence Diagram Method)とADM法(=Arrow Diag
 ram Method)の2手法があります。
 PERT/CPMはADM法の表記法を採用した手法です。順番に話を進めていきま
 しょう。

 ◆PDM法は
  作業記述ボックスを作り、そのボックスに「作業名」を付け、「開始日」、「工数
  (期間)」、「完了日」を記述します。この作業ボックスの従属関係を矢印で関係
  付けて作業ネットワーク図を作成します。
  例として、作業として外部設計局面にある「業務フロー図作成」、「入力仕様書
  作成」、「データベース仕様作成」という3種類の作業を取り上げてみましょう。
  「入力仕様書作成」、「データベース仕様作成」の作業は「業務フロー図作成」の
  成果物を前提として作成されますので、従属関係ができます。「業務フロー図
  作成」を“11月1日”に開始し、“5人日”の工数を要するとしますと、
  「業務フロー図作成」のボックスには業務名“業務フロー図作成”、開始日は
  “11月1日”、工数は“5人日”、完了日“11月6日”が記載された作業ボッ
  クスが出来上がります。
  後続の「入力仕様書作成」、「データベース仕様作成」の作業ボックスは並行作業
  で出来ますので開始日が“11月7日”とした作業ボックスが作成されます。並行
  作業が出来るとすれば「業務フロー作成」ボックスから各ボックスへの方向へ2つ
  の矢印→で前後付けた連携したネットワーク図が出来上がることになります。

 ◆ADM法とは
  PDMの表記とは違って、作業の開始と終了をイベント(=事象)という記号(通
  常、円の中に開始日や完了日を書ける)を設け、その間をアクティビティ(=活
  動)と言われる矢印“→”で結びます。イベントには開始日や完了日を記入し、ア
  クティビティには作業名と作業工数を記述します。
  PDM法で採りあげた例を比較として用いますと、「業務フロー図作成」の開始
  イベントには“11月1日”が記載され、アクティビティには作業名の“業務フロ
  ー図作成”と工数の“5人日”が記述され、完了イベントには“11月6日”が
  記述されることになります。
  表記法は異なりますが、ダイアグラムで意図するところは同じであることがお分か
  りになると思います。

  お分かりの方もいらっしゃると思いますが、PDM法はコンピュータ用のパッケージ
  に作り込みやすい記述法です。そのために開発されたと言っても良いかもしれませ
  ん。
 第69回はここで終了します。「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの
 手法であるネットワークロジック図の手法を整理しました。“”を取り上げました。
 次回は、“PERT/CPM-その2”でその活用法を取り上げます。

PERT/CPM-その2

 前回は「プロジェクトタイムマネジメント」の知識エリアの手法であるネットワーク
 ロジック図の表記法を整理しました。今回は、この表記法のADM法の手法であるPER
 T/CPM(=Project Evaluation Review Technique/Critical Path 
 Method)の活用法を採り上げます。

 PERT/CPMはプロジェクトのスケジュールを手法として有名ですが、その有名さは
“Critical Path Method”にあります。Critical Path Methodとは計画納期に対
 する重要な経路(Critical Path)を見つける方法ということを表しています。
 PERT/CPM手法はWBSで作成されたCA(=Cost Account)単位の作業を基にイベント
 記号とアクティビティ記号を用い、手法の記述ルールに従い、作業の前後関係をつけ
 て作業のネットワーク図を作成します。

(1)PERT/CPM法の記述ルール
 イベント記号とアクティビティ記号の使用法にはいくつかの記述ルールがあります。
 たとえば
 ◆イベント記号の使用法
  円記号には記述は前工程作業の終了日であり、また次工程の作業の開始日を表しま
  す。
 ◆アクティビティ記号の使用法
  ・アクティビティはそのアクティビティの開始イベントから出て、完了イベントへ
   の実線の矢印を引き、作業名と工数を記述します。
  ・前後関係のあるアクティビティはイベントを介して、終了アクティビティと開始
   アクティビティの関係で記述します。
  ・並行作業が可能なアクティビティはイベントを介して、複数の開始アクティビ
   ティを発生させます。
  ・前工程のアクティビティの成果物で参照をしたいという場合は、具体的な活動で
   はありませんので、破線の矢印を対象アクティビティの対象イベントへ引き、
   作業名は記述しません。
  以上のルールを用いて、PERT図を書いて見ましょう。

(2)PERT図の作成(例題)
  まず、問題を出して見ましょう。以下は問題です。
 (問題)アクティビティとして、A,B,C,D,E,F,G,Hの作業がありま
     す。それぞれのアクティビティは全て1人で行うと仮定しましょう。
   ・最初の作業はイベント1からA,Bが並行作業で始まります。
   ・D作業はA作業の成果物をもってイベント2から開始できます。
   ・C,H作業はB作業の成果物をもってイベント3から開始できます。
   ・作業E,FはC作業の完了をもってイベント4から開始できます。
   ・作業Gは作業DとEが完了して、初めてイベント5を開始できます。
   ・プロジェクトの完了であるイベント6は作業G、F、Hの成果物を持って完了
    となります。
  さらに、それぞれの作業の工数はA=4.33人日、B=6.17人日、C=
  9.67人日、D=2.50人日、E=6.00人日、F=8.50人日、G=
  10.33人日、H=5.33人日です。
  “さて、納期までに何日掛かるでしょうか?”

  以上が問題です。  答えは32.17人日です。
  この答えのイベントの経路がCritical Path(重要経路)です。詳細
  解説と改善は次回にしましょう。

 第70回はここで終了します。PERT/CPMの記述ルールを解説しました。
 次回は、“クリティカル パスの求め方と改善”を取り上げます。

PERT/CPM-その3

 前回はPERT/CPMの記述ルールを解説しました。今回は、“クリティカル 
 パスの求め方と改善”を採り上げます。

 前回のPERT/CPMの記述ルールで述べましたように、プロジェクトの作業は前工程の
 作業の成果物を参照して、新たな成果物を作成するという作業に前後が出来てきま
 す。その引継ぎの前作業の終了であり、次作業の開始である節目を“イベント”と
 称しました。
 さて、最もプロジェクト納期を最長にする作業経路であるクリティカルパスを求めて
 みましょう。
 例題は、前回の作業ネットワークを使用します。

 (問題)アクティビティとして、A,B,C,D,E,F,G,Hの作業がありま
  す。それぞれのアクティビティは計算を簡単にするために、全て1人で作業する
  仮定しましょう。
   ・最初の作業はイベント1からA,Bが並行作業で始まります。
   ・D作業はA作業の成果物をもってイベント2から開始できます。
   ・C,H作業はB作業の成果物をもってイベント3から開始できます。
   ・作業E,FはC作業の完了をもってイベント4から開始できます。
   ・作業Gは作業DとEが完了して、初めてイベント5を開始できます。
   ・プロジェクトの完了であるイベント6は作業G、F、Hの成果物を持って完了  となります。
  さらに、それぞれの作業の工数はA=4.33人日、B=6.17人日、
  C=9.67人日、D=2.50人日、E=6.00人日、F=8.50人日、
  G=10.33人日、H=5.33人日です。
  “さて、納期までに何日掛かるでしょうか?”

(1)クリティカルパスを求める
  納期日のイベント6までのイベント1からの経路と作業期間を全て挙げてみましょ
  う。
  a.イベント1→イベント2→イベント5→イベント6を経路とする作業A、D、
   Gで、作業期間は17.16日
  b.イベント1→イベント3→イベント4→イベント5→イベント6を経路とする
   作業B、C、E、Gで、作業期間は32.17日
  c.イベント1→イベント3→イベント4→イベント6を経路とする作業B、C、
   Fで、作業期間は24.34日
  d.イベント1→イベント3→イベント6を経路とする作業B、Hで、作業期間は
   11.50日
 以上の4通りになります。納期が最長になるのはbの32.17日の経路ですから、
 このイベント1→イベント3→イベント4→イベント5→イベント6の経路が“クリ
 ティカルパス”です。
 納期を改善するにはこのクリティカルパスの作業を改善しないと納期は短縮できませ
 ん。
 さて、改善するにはクリティカルパスの作業にそうでない経路の作業工数を配分
 し直して、クリティカルパスの作業の期間を短縮することです。その工数配分できる
 余裕作業を見つけることが必要になります。
 そのためには、イベント6納期期日から逆算してイベント毎に“最早完了日(TE:
 Terminate Early) ”と“最遅着手日(TL:Terminate Last)”を計算することで
 該当作業を見つけることが出来ます。

(2)“最早完了日”と“最遅着手日”を見つける
  最早完了日とはイベント1から6まで納期日を積み上げたイベントの納期日です。
  たとえば、イベント4はイベント1、3を経由する作業B(作業期間:6.17
  日)と作業C(作業期間:9.67日)がありますので、最早完了日(=TE)は
  15.84日となります。
  最遅着手日(TL)を求めてみましょう。クリティカルパスでの最長納期32.17
  日が基準になります。
  イベント4を逆算してみましょう。bのクリティカルパスではイベント6の
  32.17日から作業G(作業期間:10.33日)と作業E(作業期間
  :6.00日)を差し引きますので、15.84日になります。
  これを最遅着手日(=TL)といいます。クリティカルパスではTEとTLは同じ
  になります。

  Cの経路を同様に逆算しますと、TLは23.67日となります。クリティカル
  パスのTL=15.84日と比較しますと7.83日の差が出ます。これをスラ
  ック(=余裕)といいます。
  Cの経路の作業Fは最も早く開始できるのは15.84日目に出来ますし、遅くても
  23.67日目に開始すれば納期32.17に間に合うことを意味しています。
  このことは、Fの作業工数をイベント4以前の作業に移行しますと、納期が短縮で
  きることを意味しています。

 第71回はここで終了します。“クリティカル パスの求め方と改善”を取り上げま
 した。
 次回は、プロジェクト予算計画、予算と納期管理を同時に実施する手法である「EV
 MS」を取り上げます。

EVMS-その1

 前回までの3回はPERT/CPMを取り上げました。今回からはプロジェクトマネ
 ジメントで取り上げる最後の手法として「EVMS」を採り上げます。まず、最初は
 「EVMSとは」として、その意義と言葉の解釈を行おうと思います。

 EVMS(Earned Value Management System)は1996年米国国防総省が開発し、
 PMBOKでの進捗管理手法と位置づけられており、欧米ではプロジェクト進捗管理のデフ
 ァクトスタンダードとなっています。日本では経済産業省が2003年よりシステム 開発プロジェクト管理手法として採用を推奨しています。
 この手法はプロジェクト予算に対する出来高を予定予算の消化累計と実績費用の累積
 を把握することで、予算の予実管理と納期進捗の予実管理を行う手法です。
 EVMSで使用する管理図は横軸に年月を入れた時間軸をとり、縦軸に予算・コスト軸を
 とり、時間軸に沿って予算・コストの累積を記述して予実の対比をする管理図となっ
 ています。
 こう言いましても何のことか分りませんので、この手法で使用している3つのベース
 ライン(基礎)データについて解説いたしましょう。
 3種のベースラインデータとはPV(=Planned Value)、AC(=Actual Cos
 t)とEV(=Earned Value)です。

(1)PV(=Planned Value)
 このデータは月別の作業工数に沿ったプロジェクト予算を月度別に積み上げた予算で
 す。
 通常、プロジェクト予算は作業スケージュールに沿った工数を月別に予算に換算し、
 月別に必要予算を算出し、プロジェクト予算はこれらの累計で算出されます。
 PVでは前月度までの予算累計に今月度の予算を加えて積み上げ予算とします。
 たとえば、1月度予算100万円、2月度予算150万円、3月度予算250万円としま
 すと、PVは1月度100万円、2月度250万円、3月度500万円となります。
 通常、皆さんがプロジェクト予算計画を行われるときの予算計画データです。

(2)AC(=Actual Cost )
 このデータは月別の実績コストを月度別に積み上げた実績費用累計です。
 プロジェクトの進捗の現時点が2月末としまし、その費用実績が1月度130万円、
 2月度170万円としますと、ACは1月度130万円、2月度300万円となりま
 す。通常、プロジェクトの予算管理で使用します実績費用です。

(3)EV(=Earned Value)
 このデータこそがEVMSを特徴付けているデータで、予定予算の消化累計を表しま
 す。
 例から入った方が分かり良いでしょう。
 プロジェクト予算の1月度、2月度がそれぞれ1月度はA作業(100万円)、2月
 度はB作業予算(100万円)とC作業(30万円)で構成されていて、現在の2月
 末時点で作業A、Bが完了しているとしましょう。
 この2月末時点のEVは200万円と計算します。すなわち、EVは予算に対して、作業
 完了した予算の累計を表すことになります。
 さて、このEVが予算と納期の予実管理を可能とします。この解明は次回のテーマとし
 ましょう。

 第72回はここで終了します。「EVMSとは」を取り上げました。
 次回は、EVMSの活用として「EVMS-2」を取り上げます。

EVMS-その2

 前回はEVMSテーマの第1回で「EVMSとは」として、その意義と言葉の解釈を
 取り上げました。今回は「EVMSの活用―その1」で“EVMS管理図の作り方”を取
 り上げようと思います。

 EVMS(Earned Value Management System)によるプロジェクトの進捗管理は
 前回で述べました3種のベースラインデータを用いEVMS管理図を作成します。
 EVMS管理図は横軸に時間軸、縦軸にコスト・予算軸を取ります。横軸の時間軸は
 プロジェクトの開始月から月単位にプロジェクト終了月までスケールし、縦軸は計画
 予算と実績コストを金額単位(たとえば、千円)に合わせてスケールします。
 ベースラインデータのグラフ記述順序は計画時点での積み上げ予算であるPV
 (Planned Value)を描き、進捗実績が出た時点で実績コスト累積とし
 てのAC(Actual Cost)と実績に対応した予算の消化累積のEV(Ea
 rned Value)を描きます。

(1)PVデータグラフの作成
 このデータは皆さんがプロジェクト予算を作成する時の作業と同じです。プロジェク
 トの月別の作業工数を見積り、その工数を予算に変えて、月ごとに納期月まで予算を
 累計したグラフです。
 例として、プロジェクト開始月が1月で、終了月を4月のプロジェクトがあり、その
 計画作業が1月は“AとB作業”、2月は“C作業”、3月は“DとE作業”、4月
 は“G、FとH作業”であり、その工数(単位:人月)をA=4.33、B=6.1
 7、C=9.67、D=2.50、E=6.00、F=8.50、G=10.33、
 H=5.33としましょう。簡単のために工数単価を1万円/人月としますと、PV
 データは累計ですので、1月=10.50万円、2月=20.17万円、3月=
 28.67万円、4月=52.83万円のグラフとなります。

(2)ACデータグラフの作成
 このデータは月ごとの実績コストの累計です。現時点を3月末として、各月の実績コ
 スト累計であるACが1月度12.5万円、2月度23万円、3月度29万円であっ
 たとしましょう。
 今までの予算管理ですと、3月末の予算と実績の差異は1.37万円(=29-
 28.67)の予算オーバーとしました。
 EVMSではEVデータグラフを加えることで、この考え方に意義を唱えました。
 このデータは正確な予算差異に加え、納期差異も把握できるデータとなりました。

(3)EVデータグラフの作成
 このデータは作業完了した作業予算消化の累計ですので、各作業の予算に焦点を当て
 ます。
 たとえば、計画では3月末の完了予定作業が作業A、B、C、D、Eでしたが、現在
 の3月末の時点で作業のA、B、C、Dまでの完了であったとしましょう。
 そうしますと、3月末のEVは22.67万円となります。
 EVMSではコスト差異(=予算と実績の差異)はACとEVの差である6.33
 万円(=29-22.67)になります。完了した作業予算と完了した作業実績を
 対比していますのでより、正確なコスト差異となっています。
 もう一つはスケジュールコスト差異(予定納期と実績の差異)です。この差異はPV
 とEVの差異として6万円(=28.67-22.67)を把握し、この差異を工数
 単価で除しますと遅れの工数または期間が把握できます。
 以上のように、EVMSはEVデータを管理グラフに加えることで、コストと納期の
 予実管理が可能にしました。

第73回はここで終了します。“EVMS管理図の作り方”を取り上げました。
次回は、この差異を下にプロジェクトの“最終予算と納期の推定”手法を「EVMSの
活用-その2」として取り上げます。

EVMS-その3

 前回、“コスト差異”と“スケジュールコスト差異”を取り上げました。この差異
 からこの差異のままで遂行した場合の予想コストと予想納期を算出してみましょう。
 前回の例から、3月末時点でのPV(予算累積)、AC(実績コスト累積)、EV(完了
 作業対応の予算消化累計)はそれぞれ28.67万円、29万円、22.67万円
 で、コスト差異(=EV-AC)は6.33万円、スケジュールコスト差異(=EV-
 PV)は6万円でした。
 まず、予想コストの算出からです。EVMSではEAC(=Estimated 
 At Completion:予想コスト)といいます。

(1)EACの算出
 この計算のポイントは今までの実績を見ていきます。3月末の時点でEV=22.67
 万円、AC=29万円ですので、このままの状況で進めば、残りの作業もこのコスト
 差異の比率で差異が増大することになります。PVの最終の予想コスト(BAC:Ba
 dget At Completion:計画納期予算累計)は最終納期までの残作業
 のコストもこの比率で増大することになります。この比率をEVMSではPF
 (=Performance Factor)といい、この例では22.67/29
 =0.78になりますし、この例でのBACは52.83でした。
 EACの計算式は EAC=AC+(BAC-EV)/PFとなります。
 本ケースの数値を当てはめますと、EAC=29.00+(52.83-22.6
 7)/0.78=67.67となり、計画納期予算との差異は14.84万円
 (=67.67-52.83)まで広がることになります。 次に、計画完了予想日
 を算出してみましょう。

(2)計画完了予想日の算出
 3月末でのスケジュールコスト差異は6万円でした。人月工数単価は1万円としまし
 たので、6人月の工数分の計画遅れです。12人で実施していますと、半月の遅れと
 いうことになります。
 スケジュールコスト差異のPF(=Performance Factor)を出し
 てみましょう。
 3月末のEV=22.67万円、PV=28.67万円ですので、この比で納期遅れが
 出ていますので、PF=22.67/28.67=0.79となり、“3月末で
 28.67の工数分の作業が終了すべきところ、22.67工数の作業しか進まな
 かった”ということをあらわしています。
 今後の作業期間はPVでの4月末納期日までの1.5ヶ月(=4月30日―3月15日)
 がこのPFの比で膨らむことになります。
 計画完了予想日は 
 計画完了予想日=現時点+(PV計画納期日-EV完了時点)/PFとなりますので、
 数値を挿入しますと、(ただし、1ヶ月を便宜上30日と想定)
 計画完了予想日=3月末+(4月末-3月15日)/0.79 5月27日で
 27日の納期遅れへと膨らむことになります。
 この予算オーバーと納期遅れを見極めた上でコスト低減と納期短縮対策が講じること
 になります。

 第74回はここで終了します。“最終予算と納期の推定”を取り上げました。
 この回までの74回に亘り、当講座でITコンサルタントに必要な基礎知識を取り
 上げて参りました。基礎知識の講座はこれで終了したいと思います。
 今後のこの講座ではこの基礎知識の応用した実際のテーマとして取り上げようと
 思っています。
 そのために、次回はこの応用のテーマ目次「ITコンサルタントのための応用知識
 テーマ」を取り上げ、全体を把握していただこうと思っています。

ITコンサルタントのための応用知識テーマ

 前回までの74回まではITコンサルタントに必要な経営戦略、情報戦略における基本
 となる考え方とその主要メソドロジーの基礎知識の解説をしてまいりました。
 基礎知識は習得されたと思いますので、今回からこの基礎知識の応用を中心とした
 講座へ移行しようと思います。
 ITコンサルタントは経営戦略に沿った「戦略目的適合性システム」の構築を支援する
 ことにありました。このシステムを構築するコンサルタントとして、的確な指導を
 実践するには基礎知識を応用できる能力が必要になります。
 今回からの講座はこの応用力を修得できる講座にしていきたいと思っています。
 その第1回として、今回はその全体像をご紹介いたします。
 これからのメルマガシリーズの目的です。

(1)目的
 「ある企業のケースとして取り上げ、経営計画、情報化計画を策定する上での考慮点
  とメソドロジーの使用法を取り上げ、経営戦略策定から情報化施策策定までを連続
  した話として一気通貫のストーリーとし、現実に対応できるスキルを修得する」を
  目的にしようと思います。
  その方法として、このストーリーの中ではプロジェクトメンバーが各ステップを
  進めて行く中で生じる疑問や手法の使い方で感じる疑問にITコンサルタントが
  答えていく形式をとって行きます。
  そのために、取り上げますテーマの構成は

(2)取り上げるテーマ
   ◆プロジェクトの発足
    企業紹介/事業の特徴/マーケティング環境(5Forces)
   ◆事業ドメインの定義
    経営戦略とは何?、SWOT、CSF、コアコンピタンス、事業ドメイン定義
   ◆経営施策の作成
    経営施策展開(BSC)
   ◆ビジネスモデルの作成
    ビジネスモデル、インフルエンスダイアグラム、選択と集中
   ◆経営管理指標の作成
    KGI/KPI、経営施策の指標化(BSC)
   ◆事業計画の作成
   B.E.P、Discount Cash Flow、3部制資金繰り
   ◆情報化方針の策定
    ITガバナンス、ジェネリックモデル、リスクマネジメント
   ◆ビジネスプロセスギャップ分析
    DFD、UML、IT成熟度
   ◆情報化施策策定
    情報化施策とIT成熟度施策、3フェーズプラン、直接効果・間接効果
   ◆情報化プロジェクトスケジュールと管理
    EVM
以上の10個の大テーマをそれぞれのサブテーマに整理して、ストーリーとして作成
していきたいと思います。
 このストーリーは“分り易く”、“役に立つ”をモットーとして進めていき
ます。
 読者の皆様のご支援をお願いいたします。

プロジェクトの発足-企業紹介

 75回で紹介させていただきましたが、74回まで配信しました経営戦略と情報戦略
 の知識を用いてITベンダーのITコンサルとして戦略策定を指導するプロセスを構築
 のHowToを中心にしたストーリーとして組み立てていきます。私の立場は悩みと工夫の
 ITコンサルタントです。

ある中堅のITベンダーから“大阪事業部の改革をして儲かる事業構造に したいので、指導いただけませんか”という話がありました。
 お客様に伺うのは10日後だったのですが、事前にお客様状況の把握が必要です。
 上場はしていないようですので、企業内容をインターネットで調べました。
 企業プロファイルの「基本情報」はつぎのようなものでした。
 
 ◆創業:1990年5月1日
 ◆資本金:3億円
 ◆企業関係:外資系コンピュータメーカの有力販売店、中堅企業向ERPメーカの販売店
 ◆事業分野:
  ・パソコン&サーバー、ネットワーク商品の販売と導入サービス
  ・ハードウエア保守サービスおよび技術相談窓口サービス
  ・業務システム開発・導入サービス
 ◆売上高       : 70億円(今期予想) 前期対成長率 ほとんどなし
  ・営業利益 : 1.2億円(今期予想)
  ・利益剰余金累積  : 6.0億円(今期末予想)
・従業員 : 正社員 145名
・拠点 : 東京(本社)、大阪事業部    
・主要取引先     : 大手メーカー(電気、農機具など)および中小製造業
◆組織(大阪事業部以外は全てロケーションは東京)
  ・事業部:大阪事業部(24名)、東京第1事業部(大手顧客担当:25名)、
東京第2事業部(中小中堅顧客担当:20名)の営業を中心とした部隊
  ・システム開発事業部:ERP開発部(11名)とe-ビジネス開発部
(インターネット&グループウエア:10名)がありシステム開発を中心
とした部隊
  ・サービスセンター:ITインフラ設計、ハードウエア保守、ヘルプデスクサービス
部隊(全29名)
  ・管理部門:業務管理部、経理部、総務部等(19名)

この基本情報から、いくつかの情報が得られました。
◆売上高営業利益率(1.2億/70億→1.7%)が低い。“過当競争かな?”、
戦略商品・サービスの選択と集中は出来ているか?”、“社員の意識と会社方針と
のベクトルは合っているのか?”など
◆利益剰余金累積が6億円。企業としての投資のMAXは6億+減価償却費位見て
いて良いかな?
◆大阪事業部は顧客からの技術的対応はどうしているのか?
◆システム開発部隊、サービスセンターのサービス内容と収益率は?
◆先端の外資ITメーカと今後期待できる中堅ERPメーカは事業に如何に貢献して
いるのだろうか?
などです。

その上で、今度の顧客CALL時に顧客から収集すべき情報として、
 ◆過去3期の財務状況と推移
 ◆全社の事業内容と大阪事業部の特徴
 ◆大阪事業部の事業・業界環境
 ◆プロジェクトの目標、期限、体制、役割
 を挙げて、訪問時の会話の組立を考えることにしました。

 第76回はここで終了します。これからのストーリーの企業プロファイル基礎情報を
 整理しました。
 次回は、テーマ「プロジェクトの発足-事業の特徴」で大阪事業部の特徴に焦点を
 当て、「5つの競争要因分析(ポータ)」を用いて情報収集をしましょう。

プロジェクトの発足-事業の特徴

75回で紹介させていただきましたが、74回まで配信しました経営戦略と情報戦略
の知識を用いてITベンダーのITコンサルとして戦略策定を指導するプロセスをストー
リーとして組み立てていきます。私の立場は悩みと工夫のITコンサルタントです。
 顧客訪問日になりました。お会いします大阪事業部長の山田氏には “当日は3つの
ことをお聞きしたい”と前もって依頼をさせていただきました。
・1つは「事業部の組織特徴」
・2つ目は「対顧客活動状況」
・3つ目は「マーケット環境要因」 の3つです。

山田氏の話から「事業部の組織特徴」と「対顧客活動状況」を整理しておきます。
(1)「事業部の組織特徴」
  ◆組織:営業部12名、SE部10名、営業推進:2名
   ・電気、農機具の大手顧客を中心としたビジネスと中堅・中小企業向けのビジネ
スがある。
   ・SE部は大手顧客の技術相談SE、サーバー・ネットワークの設計/導入SE
からなる。開発は地場のソフトベンダーか本社のシステム開発部へ発注する。
大手顧客以外の技術相談は本社のサービスセンターで対応する。
   ・営業推進は顧客からの問合せや要望への回答など外出している担当営業の代行
を行う社内で対応する営業からなり、1名は大手3社の専任担当。
  ◆事業内容
   前期の事業部の全売上は12.1億円で全社の約2割弱。顧客数は約50社、主要顧客の
大手メーカ顧客3社(8事業部)
   ・パソコン&サーバー、ネットワーク事業:7.8億円、粗利率15%。PCは
粗利率5%で低下傾向。
   ・ハードウエア保守および技術相談サービス:3.7億円、粗利率60%。
   ・業務システム開発:webおよびグループウエアシステム開発0.6億円、
    利益ゼロ。 

 (2)「対顧客活動状況」
   ・大手顧客3社の営業体制は専任営業制。その中の重要顧客A社は3名(1名は
    顧客常駐)である。
   ・大手顧客3社で売上6.6億円(55%)、粗利2億円(60%)を占める。
    粗利の内訳は技術相談・保守サービス&web関連開発1.4億円
    (70%)、ハードウエア0.6億円(30%)を占める。 顧客A社に対し
    ては顧客のインベントリー管理を始め、このデータを加味して技術相談の実施
    を始めた。
    (注)インベントリー管理:PCやその関連ソフトの資産とバージョン管理
    ・中堅・中小の顧客の多くは3年前までのパッケージによる基幹システム開発
に携わっていた顧客で、現在は地場のソフト開発ベンダーと提携して支援
している。中堅・中小企業顧客との付き合いは長く、リレーションは良い。
    ・大手顧客には専任担当SE制を引き、技術相談もカバーしている。また、顧客
からの発注の進捗状況と納入予定をイントラwebサービスで提供している。
    ・大手顧客の受注増加率は停滞気味になってきており、今後の戦略が非常に重要
な局面にある。
    ・新規顧客として、地場の有力CATV局のwebサイトとPC技術相談ビジネ
スを受注した。
    ・大手顧客、中堅顧客への営業コンタクトは情報室が中心であり、顧客の全部門
でみれば、営業カバー部門比率(=顧客内部門取引シェア)は15%程度で
ある。今後、営業による顧客内部門カバー率を上げることが課題である。
事業は順調そうに見えるが、大きな外的要因があり、ビジネスの伸びを押さえている
ようにも見える。
  顧客の組織特徴と対顧客活動状況が概ね理解できたので、マーケティング環境を調査
することにしました。コンサルティングの始まりです。
「5つの競争要因分析(ポータ)」を使って調べてみることにしました。

第77回はここで終了します。これまでは企業プロファイル基礎情報の整理でした。
次回は、テーマ「プロジェクトの発足-マーケット環境分析」でポータの5つの競争
要因分析を使って大阪事業部のマーケティング環境を把握していきます。

プロジェクトの発足-マーケティング環境

75回で紹介させていただきましたが、74回まで配信しました経営戦略と情報戦略
の知識を用いてITベンダーのITコンサルとして戦略策定を指導するプロセスをストー
リーとして組み立てていきます。私の立場は悩みと工夫のITコンサルタントです。
プロジェクチームの事業部長の山田氏、営業課長の中川氏、SE課長の上野氏との
対話で進めていきます。
メンバーはすべて当メルマガの愛読者の方々です。ただ、実践は初めてです。

 顧客の組織特徴と対顧客活動状況が概ね理解できたので、マーケティング環境をヒア
リングすることにしました。コンサルティングステップの始まりです。
ヒアリングのポイントは「5つの競争要因分析(ポータ)」の要因を使って行うことに
しました。
5つの要因には、「1.業者間の敵対関係」、「2.新規参入の脅威」、「3.代替品・サー
ビスの脅威」、「4.買い手の交渉力」、「5.売り手の支配力」の切り口でした。順番
に聞いて見ましょう。

私 :御社の業界の競争は厳しい環境と思われますが、いかがですか?(1)
山田氏:ええ、競争が激しい業界の1つだと思います。
私 :そうですか、御社はハードウエア、ソフトウエアともに取扱っておられます
が、それぞれどんな競争相手にあるのですか?
山田氏:そうですね、ハードウエアでは大手顧客に外資のDメーカの浸透がすさまじ
く、PCは主導権をとられていますし、日本のメーカN社、F社からハードウ
エアと保守サービスの一体型で弊社より安い価格提案をします。
私 :新規にこの業界に参入してくる競合他社は多いのですか?(2)
山田氏:PC等のディスカウントストアの進出が脅威です。数量の少ない中堅・中小
顧客がずいぶん流れています。
私 :御社には顧客の参入障壁を作るような何か手を打たれていますか?(2)
山田氏:ふ~む。顧客の課長クラスとは長年の付き合いがありペネトレーションは
強いです。また、大手顧客3社には個別にSEをつけた技術相談サービスが
ありますし、顧客の受注状況を受注から納品まで検索できるWebシステム
をエクストラネットで提供しています。
私 :ある程度の参入障壁になっていますね。別の質問ですが、御社のビジネスが
なくなるような代替手段があって、お客様を失うような状況がありますか?
(3)
山田氏:最近はPCが安価になったため、保守契約を締結せずに買換えで対応する
顧客が増えています。
私 :製品でなく、サービス形態の代替ですね。ところで、御社はお客様との人的
関係はよさそうですが、ビジネス上での主導権は取れていますか?(4)
山田氏:ビジネスとなるとそう簡単ではないですよ。中堅・中小企業ではシステム
開発案件は相見積りが一般的で買い叩かれます。顧客より早い提案であれば
主導権が取れるのですが、手が回らない状況です。
     また、ハードウエア関係でのビジネスの多い大手顧客ではほとんど顧客の
主導の価格で決まってしまいます。
 私 :御社は外資メーカの有力ディ-ラですが、メーカに対する要求や要望は
かなり通りますか?(5)
 山田氏:仕切値をもっと低くしてほしいと言っているのですが、限界のようですね。
ただ、日本のメーカは弊社のサーバーやネットワーク提案だけでなく、業務
/運用ソフトを絡めた総合提案をしてきていますので、メーカの支援を依頼
しているのですが、適切な支援がなくて・・・、自社でも対応を考えている
ところです。

  以上のような次第で大阪事業所のマーケティング環境のヒアリングを終えました。
  マーケティング環境は外部環境のミクロ環境の調査です。この調査にはポータの
「5つの競争要因分析」を用いるのが最適のようです。

  企業プロファイルとマーケティング環境を把握できましたので、プロジェクト
メンバーと事業ドメインの定義に進んで行くことにしました。
メンバーは事業部長の山田氏、営業課長の中川氏、SE課長の上野氏の3名で毎週
土曜日を使って進めることにしました。
早速、営業の中川氏から“経営戦略って何のために必要なのですか?”と質問が
出ています。

第78回はここで終了します。これまでは企業プロファイルに続いてマーケティング
環境を把握しました。
 次回は、テーマ「経営戦略とは何?」で経営戦略の意味を考察していきます。

事業ドメイン定義 経営戦略とは何?

75回で紹介させていただきましたが、74回まで配信しました経営戦略と情報戦略
の知識を用いてITベンダーのITコンサルとして戦略策定を指導するプロセスをストー
リーとして組み立てていきます。私の立場は悩みと工夫のITコンサルタントです。
プロジェクトチームの事業部長の山田氏、営業課長の中川氏、SE課長の上野氏との
対話で進めていきます。
メンバーはすべて当メルマガの愛読者の方々です。ただ、実践は初めてです。

企業プロファイルとマーケティング環境を把握できましたので、プロジェクトメンバ
ーと「事業ドメインの定義」を進めていくことにしましたが、営業の中川氏から
“経営戦略って何のために必要なのですか?”の質問が出ていますので、ここから
プロジェクトメンバーの共通認識をとっていくことにしました。

中川氏:経営戦略とは何でしょうか?
私 :戦略とはもともと戦争用語ですね。相手を打ち負かすための兵隊、武器、
その支援である兵站を配置する方策を言いました。この戦略をビジネス分野
に置き換えた用語が経営戦略です。
ビジネス環境で経営戦略の位置づけを捉えるには「経営理念」、「経営ビジ
ョン」、「経営戦略」、「経営施策」の代表的な経営用語の概念を明確に
しておくことが必要です。
「経営理念」とは英語では“Identity”、日本語では“存在価値”
と訳されています。すなわち、
“御社は何のために社会に存在しているか”を定義したものです。企業経営に
おいてもっとも最上位または根底にある概念です。経営戦略もこの概念の
上に策定されます。
御社では社是に「信用を重んじ、着実を旨とする」がありますね。これが
該当します。

中川氏:経営ビジョン、経営戦略、経営方針という用語は良く聞きますが、
同じですか?
 私 :関係はしていますが、違います。
経営ビジョンは中長期の自社のあるべき姿です。経営理念をもち社会に貢献
しようとしてもその企業自身が倒産しては何の意味もありません。
したがって、同業他社に対し優位に立ち、企業を存続するための事業ビジョ
ンが必要になります。
ですから、経営ビジョンには3年後にどういった事業形態で存在しているかを
示す事業の定義と事業目標である売上高や利益高等を定義するわけです。

中川氏:じゃー、経営戦略と経営方針は何を定義するのですか?
私 :経営ビジョンとしてのあるべき姿としての事業が定義できると、これから
実施すべき経営の方向が見えますね。これが経営方針となります。
この方針の下に経営ビジョンを実現する方策作る必要があります。
すなわち、一期目、二期目、3期目に人を増員したり、販売店を増やしたり、
工場建設等の「ひと」、「もの」、「かね」といった経営資源を投入して、
営業力を強化したり、生産能力の強化、生産性向上等が必要になります
     ね。
     すなわち、“同業他社に対して競争優位に立つための経営資源の最適配分す
     ること”を「経営戦略」といいます。
     最適配分とは目標に対して、企業活動がバランスの取れた経営資源の配置を
     言います。
     たとえば、営業を増強して強化されたとき、対応する技術要員のバランスが
     取れないと経営にムダやムリが出てきます。それが損失となって現れます。

 中川氏:経営戦略と経営施策は同じ意味合いを持つような気がするのですが。
 私  :山田さんの感覚は正しいですね。
     経営戦略と経営施策は上位と下位の概念になります。
     経営戦略を達成するために何を実施するかの具体的な投資実施事項になって
     きます。
     御社の事業の1つであるITネットワーク事業は経営ビジョンの1つの事業
     で、経営目標達成のための事業戦略です。この事業戦略も売上や利益の事業
     目標を持っています。
     この目標を達成するための方策が事業施策(=経営施策)になります。
     たとえば、このITネットワーク事業を達成するための“○○システムの
     導入”、“XX営業部の営業要員の増員”、“△△設備の購入”などが経営
     施策となってきます。経営戦略や経営施策は経営資源の動きが判断できる
     方策でなければいけませんね。

 中川氏:なるほど、経営戦略は効果的な経営活動のための要になってますね。
 私  :そうです。経営ビジョンを描いても、経営資源の最適配分を行う経営戦略が
     企業の優劣を決めると言っても過言ではないでしょうね。
 みんな:さて、経営戦略作りのためにSWOT分析を進めましょう!!

第79回はここで終了します。今回は経営用語の定義と経営戦略に対する重要性の
共通認識でした。この共通認識がないと、SWOT分析がチグハグになります。
必要なステップです。

次回は、テーマ「事業ドメイン定義までの手順は?」で経営戦略策定の手順を考察して
いきます

SWOT分析-1 強み弱み要因?

75回で紹介させていただきましたが、74回まで配信しました経営戦略と情報戦略
の知識を用いてITベンダーのITコンサルとして戦略策定を指導するプロセスをストー
リーとして組み立てていきます。私の立場は悩みと工夫のITコンサルタントです。
プロジェクトチームの事業部長の山田氏、営業課長の中川氏、SE課長の上野氏との
対話で進めていきます。
メンバーはすべて当メルマガの愛読者の方々です。ただ、実践は初めてです。

 今日はSWOT分析を用いて、事業ドメイン定義を行うまでのスケジュールの打ち合
わせに伺いました。
 伺いましたら、上野氏から早速、“事業ドメイン定義までの主要成果物をWBS
(=Work Breakdown Structure)を用いて作成しましたの
で、原案として討議いただけませんか?”と資料を提出されました。

 上野氏:事業ドメインを定義するまでのステップを4ステップに分け成果物を捉えて
みました。
     (注)4つのステップとは「強み・弱み要因、機会・脅威要因を整理した
      SWOT分析表の整理」、「SWOT要因を組み合わせて創出するCSF
      (Critical Success Factor)表の作成」、「コ
      アコンピタンスによるCSFの選定」、最後に「事業ドメイン定義と事業
      選定」です。
 私  :良くできてますね。この手順で進めていけば良いと思います。
 中川氏:問題はこれらの成果物をいかに的確にまとめられるかですね。
 私  :そうですね。よく成果物の意味を理解しながら進めていかないと的確な
     成果物になりません。SWOT分析表から順番にすすめていきましょう。
     まず、強みと弱み要因を挙げてみたいのですが、強みとはどんな要因でした
     か?
 中川氏:これらの要因というのは業界環境、すなわち同業他社に対する自社の
     強み、弱み要因でしたね。弊社はPCやサーバーをITベンダーとして販売
     能力を有していますが、これは強み要因と考えて良いですか?
 私  :ITベンダーであればとこでも持っている1次レベルの能力や設備は同レベル
     なので、強みとはいいませんね。差別化できる優位性のある要因が強み要因
     となります。
 中川氏:それでは、PCやサーバーを最新のネットワーク化するスキル、導入機器や
     システムに対するヘルプデスクを組織化しています。これらは強み要因です
     ね。
 私  :そうです。ITベンダーにとってPCやサーバースキルといった1次レベルの
     スキルでなく、1次レベルスキルのシナジーによる2次レベルのスキルや組織
     機能は強みになります。差別化でき、ビジネスを獲得できる競争優位に立て
     るからです。
     整理してみましょう。
     強み・弱みの要因は経営資源と経営機能から出していきます。
     経営資源からの要因には差別化できるスキルを有する従業員、
     すなわち「ひと資源」。優位性のある商品/サービスや設備を有した「もの
     資源」、余裕ある投資ができる「かね資源」があります。
     もうひとつの差別化要因は組織機能としての経営機能です。販売機能、製造
     機能、経理機能等の組織機能としての強さです。
     たとえば、セル生産方式、強い販売店舗、ヘルプデスク等はこの経営機能の
     強みになります。
     「弱み」要因は同業他社に対してこれらの要因が競争優位に無いものを言い
     ます。
 山田氏:今後、強くしようとしている仕組みがありますが、これは強み要因ですか?
 私  :強み・弱み要因は現在の能力を言います。今後の強み要因は現在能力を有し
     ていないのですから、強み要因とはいいませんね。強み、弱みとは現在の
     能力に対して定義します。
     それでは、強み・弱み要因を挙げてみましょうか。
 みんな:了解。

 (作業)・・・・・・・・・

 山田氏:機会・脅威要因とは競合他社とのビジネスチャンス要因とロス要因と考えて
     おけば良いのでしょうか?
 私  :良い質問ですね。それでは今度は機会・脅威要因に移りましょう。

第80回はここで終了します。今回は強み・弱み要因の意味の共通認識でした。実践で
出てくる疑問点を整理しました。
次回は、テーマ「SWOT分析-2」で機会・脅威要因の意味を考察していきます。

SWOT分析―2 機会・脅威要因?

 今日は山田氏から出ていました質問から、SWOT分析のもう一方の要因である
機会・脅威の意味の共通認識に進めました。山田氏の質問は、
“機会・脅威要因とは競合他社とのビジネスチャンスとロス要因と考えておけば良いの
でしょうか?”でした。
  
 私  :ひとつの視点としては良い指摘だと思います。SWOT分析での機会・脅威
の視点は自社ではコントロールできない競合他所も含んだ寄り大きな外部
から与えられるビジネスチャンスとロスの要因と捉えた視点の方がより適切
と思いますね。
 中川氏:業界環境だけでなく、政治、経済などの要因も含まれるということですか?
 私  :その通りです。この外的要因は大きく2つの要因に分類します。ひとつは
「マクロ環境要因」、もうひとつは「ミクロ環境要因」です。
     マクロ環境要因とはPolitical(政治)、Economical
(経済)、Social(社会)、Technical(技術)の4つで
PEST要因といわれています。
Politicalには「牛肉輸入規制緩和」、「e-Japan政策」、
「ISMS制度」等ありますし、
Economicalには「中国の経済成長」、「デフレ環境」等が挙げら
れます。
Socialには「トレーサビリティ」、「環境規制」、「少子化」等、
Technicalには「ナノ技術」、「ユビキタス技術」、「オープン
ソース化」等があります。
ミクロ環境というのは山田さんの質問で「業界環境」に関わる要因です。
 上野氏:業界環境というと、強み・弱み要因も同業他社との優位性要因として捉え
ましたので、内部環境の強み・弱み要因と同じ要因になってしまいま
せんか?
 私  :ちょっと違いますね。強み・弱み要因では自社の経営資源と経営機能と同業
他社の比較から発生する内的要因でしたね。
ここでいう「業界環境に関わる機会・脅威要因」とはコントロールできない
要因で捉えます。
たとえば、日本のスーパー業界にウォールマートが進出しますね。中国の
安くて優秀なプログラマーも進出してます。これらの要因はそれぞれの業界
の企業にとって自社でコントロールできる要因ではありません。その業界に
ある企業にとっては大変な脅威要因となります。
 上野氏:違いがわかりました。しかし、中国の安くて優秀なプログラマーの進出は
当事業所にとっては利用したい機会要因です。外的要因には脅威、機会要因
の両方が存在しているのでしょうか?
 私  :機会・脅威要因は自社にとってどちらかを判断すべき要因です。「中国の
安くて優秀なプログラマーの進出」はソフト開発を持っていない大阪事業部
にとっては機会要因でしょうが、ITソフトベンダーにとっては大きな脅威
要因です。機会・脅威要因は立場によって判断すべき要因なのです。
 山田氏:そうそう、先日インタビューいただいた「5つの競争要因」に関するQ/A
は業界環境でしたね。これは機会・脅威要因と考えてよいですか?
 私  :その通りですね。ミクロ環境での機会・脅威要因です。
 中川氏:もうひとつ質問!今度、お客様(業界第4位)が業界2位の同業他社と合併
になります。この要因は脅威と捉えてよいですか?
 私  :いえ、機会と捉えたほうが良いですね。チャレンジできる市場が増え、将に
必要な対策を創出していく要因ですので機会ととらえてください。
変化は機会と捉えるのを基本に考えてください。そうしないと、今後の事業
のネタが無くなってしまいます。
さて、機会・脅威要因として追加できる要因を洗い出し、整理して見ま
しょう!!
 みんな:了解。
   (作業)・・・・・・
   
第81回はここで終了します。今回は機会・脅威要因の意味の共通認識でした。実践で出てくる疑問点を整理しました。

次回は、テーマ「SWOT分析-3」でCSF(Critical Success Factor:重要成功要因)の意味を考察していきます。

SWOT分析―3 CSF?

今日はSWOT分析のための強み・弱み、機会・脅威要因が整理されましたので、
経営戦略策定の基礎となるCSF(=Critical Success Fact
or:重要成功要因)の創出を行うために伺いました。
早速、理論家の上野氏から質問です。

 上野氏:CSFが経営戦略の基礎になるといわれると、先日の経営戦略の討議で経営
戦略を策定する前提として「経営方針」、「経営ビジョン」がありました
ね。CSFはこのどちらかになるのですか?
 私  :経営方針と考えてよいでしょう。先日の討議は経営用語の共通認識するため
の話でしたので、上位概念から話しました。経営戦略を作るためには経営
ビジョンを作ることが必要でした。経営ビジョンには事業とその事業目標を
定義が必要です。この事業目標を達成する方策が経営方針でした。
すなわちそれがCSFと考えて良いでしょう。
 上野氏:と言うと、CSFを定義するということは経営ビジョンにある事業の経営
方針を作っているようなものですか?
 私  :そうですね、CSFはビジネスの拡大を図る要因ですので事業の方向を表
しますので選択されたCSFは経営方針になります。
選択というのはCSFの創出が4つのSWOT要因からのブレーンストー
ミングによる発想的創出ですので、創出後、その可能性の成否を見極めて
適正な定義をすることが必要になります。
 山田氏:CSFが発想的創出であれば、3年後の経営ビジョンから見ても企業体力に
合わないような方針が出たりしませんか?
 私  :出てきます。しかし、たくさんそんな方針をたくさん出した方が良いです
     ね。
     経営ビジョンを作るときは拡大発想でアイデアを創出した方が良い案が出て
     きます。現状の体力を考慮して発想したりしますと優れた発想が出てこない
     ことがあります。
 中川氏:CSFを発想する段階では現在の経営資源や経営機能の能力や体力は考慮
     しないほうが良いということですね。
 私  :その通りです。お客が満足し、事業の売上や市場シェアを向上する要因を
     発散方式で列挙していけば良いのです。その後、自社の経営体力を見て、
     経営体力に合ったCSFを選択し、そのCSFのもとで経営戦略を策定する
     ようにします。
 中川氏:SWOTの内部要因としての「強みと弱み」と外部要因としての「機会と
     脅威」を組み合わせて、CSFを創出するのでしたね。
     そうすると組み合わせは4つありますね。
 私  :さすが、良く覚えてますね。「強み-機会」、「弱み-機会」、「強み-
     脅威」、「弱み-脅威」の4つの象限ですね。
     この組み合わせ毎にCSF要因が違ってきます。「強み-機会」象限は現在
     有している強みに機会が出てきたのですから“事業拡大の要因”を創出すれ
     ば良いですね。
     「弱み-機会」象限はビジネスの機会が出てきたのに同業他社より能力が
     劣っています。新規事業として成功する要因を創出することになります。
     「強み-脅威」象限は事業転換をスムーズにする要因になりますし、
     「弱み-脅威」象限はスムーズに撤退すべき要因となりますので検討は不要
     でしょう。
     それでは、「強み-機会」の象限からCSFを検討してみましょう!!
 みんな:了解!!

第82回はここで終了します。今回はCSFの意味の共通認識でした。実践で出てくる疑問点を整理しました。
次回は、テーマ「SWOT分析-4」でCSFの創出手順を考察していきます。

SWOT分析―4 CSF創出手順

 今日はSWOT分析のための強み・弱み、機会・脅威要因が整理されましたので、
 経営戦略策定の基礎となるCSF(=Critical Success Factor:重要成功要因)
の創出を行うために伺いました。
 以前に整理した強み・弱み要因と機会・脅威要因を組み合わせて、CSFの創出の
 作業が始まりました。早速、質問です。

 中川氏:「強み・機会象限」、「強み・脅威象限」、「弱み・機会象限」、「弱み・
      脅威象限」とありますが、どの象限から進めるのですか?どの象限から
      でも良いのでしょうか?
 私  :「強み・機会象限」、「弱み・機会象限」、「強み・脅威象限」の順に進め
     ていけば良いと思います。
 中川氏:「強み・機会象限」を最初にやるのは、事業拡大のCSFを創出するのは
     他の象限より発想し易いからということですか?
 私  :それもありますが、この象限は現在の組織機能の強化要因を発想する分野
     です。
     現在、御社が経営活動を続け、利益を上げることができている強み要因が
     あります。
     ですから、この象限で現有の競争優位の強み要因を機会に合わせてより強化
     していくことで新規投資も少なく事業収益を更に向上させることができるの
     ですから、もっとも重点を置いて検討すべき象限となります。
 上野氏:極端に言えば、この「強み・機会象限」を十分検討すれば、企業は安泰と
     いえませんか?
 私  :そうとも言えませんね。外的環境の機会要因に対して弱み要因があるという
     ことはビジネスとして出遅れの状態です。この状態は「e-Japan」、
     「環境規制」、「中国経済成長」、「液晶・プラズマ技術」などのマクロ
     環境のPEST要因等に関連して出てきます。
     すなわち、この象限は今後、企業が今後生き残り、成長するためのビジネス
     シーズを強みに育てていくCSFを創出する分野ですので必ず実施する必要
     があります。
 山田氏:わかりました。
     ところで、「強み-機会」象限を検討するにしても、強み要因、機会要因と
     もに20個から30個出ていますので、各要因の組み合わせでCSFを創出する
     とすれば、400~600個のCSFを作っていく大変な作業になります
     ね。
 私  :強み要因、機会要因にある20個から30個の要因は、まず同種の要因をKJ
     (KawakitaJiro)法でまとめます。この作業をCSFの創出
     討議の前に行う第一番目の作業です。
     というのは、整理されている機会要因を見てみますと、「インターネット
     インフラが必須となっている」、「ブロードバンドインフラの急増」、
     「e-ビジネスの進展」が出ていますが、KJ法で「ブロードバンド・イン
     ターネット化の進展」位にまとめます。
     強み要因を見ますと、「IT関連であればすべてのハードウエアを調達でき
     る」、「ITインフラの提案営業ができる」、「IT構築のプロジェクト
     実施スキルがある」、「大手外資系メーカの有力ディーラである」が出て
     いますが「IT事業サイクルのスキルがある」位にまとめ他方が大意がつか
     めます。
     この様にまとめますと、「IT事業サイクルのスキルがある」強み要因を
     「ブロードバンド・インターネット化の進展」の機会環境に沿ってビジネス
     を拡大できるCSFは何かを検討することになります。
     細かな要因同士でCSFを検討するより、KJ法でやや大きめにまとめ・
     整理した状態でCSFを討議する方がより良い討議ができ易くなり、適切な
     CSFが出てきます。
     (注)IT事業サイクル:事業を遂行する「企画」、「販売」、「実装・
        生産」、「アフタフフォロー」の一連の業務プロセスを称する。
 みんな:了解。じゃ、KJ法で強み要因、機会要因をグルーピング化しましょう!
       (KJ法による要因のグルーピング化作業実施)・・・

第83回はここで終了します。今回はCSFの創出で来たのですがその前の準備作業の
共通認識でした。実践で出てくる疑問点を整理しました。

次回は、テーマ「SWOT分析-5」でCSFの創出を考察していきます。

SWOT分析―5 CSFの創出

今日はSWOT分析のための強み・弱み、機会・脅威要因がKJ法によって整理され、
CSF(=Critical Success Factor:重要成功要因)を
検討していると聞きましたので、経営戦略策定の基礎となるCSFの確定を行うため
に伺いました。
 プロジェクトメンバーが喧々諤々の議論をやっていました。が、それほどCSFが
出ていません。
 
山田氏:CSFの創出は難しいですね。発想の手順は無いのでしょうか?
 私  :そうですね、思考の自由度の高い分野なので、ちょっと戸惑いがあると思い
ます。手順といえば、CSFは経営方針/事業方針でした。方針は事業に
対する方針ですから、経営ビジョンにおける事業をイメージしないと出て
きませんね。
     「強み・機会象限」であれば、その要因の組み合わせからその事業のイメー
ジ描いて、そのイメージを具現化できる事業拡大要因を出していくことに
なります。
     ただ、その発想時に現状の経営資源やしくみ(経営機能)といったタガを
はめずに発想することが重要です。「お金がないから」、「そんな人いない
から」といった現状の課題を取り除いて、あるべき姿の観点で発想すること
です。
 山田氏:先日の強み要因「IT事業サイクルのスキルがある」と機会要因「ブロード
バンド・インターネット化の進展」を組み合わせから、「ハウジング、ホス
ティングASPサービスの仕組みがある」をCSFとしましたが、良いで
しょうか?
 私  :問題ありませんね。これは販売分野のCSFですね。このCSF以外にも
事業サイクルを考えて発想するともっと出てきます。
     事業サイクルとは、通常事業は「企画/計画」、「販売」、「実装
(設置)」、「アフタフォロー」の4つのサイクルでPDCAのサイクルを
実践しますので、この中に事業を拡大する要因、新しいあるべき経営資源、
経営機能要因が存在することになります。
 上野氏:そうか。アフタフォローで考えると、「インターネットによる双方向の技術
相談サイトがあること」などもCSFですね。
 私  :その通りです。顧客満足度が向上できますので、事業拡大を行うCSFと
考えて良いですね。
 中川氏:組み合わせによっては、CSFが余り発想できない分野がありますが・・・
     たとえば、強み要因の「中小・中堅顧客の部課長との人間関係が良い」と
機会要因の「オープンソース化の進展」などもちょっと創出するのに困って
ます。
 私  :そういう分野は多く出てきます。そんな分野は無理してCSFを出さず、
よりスムーズにCSFを発想できるところへ移ってください。無理して発想
したCSFは方針にするときムリが出てきます。
 みんな:了解。
   (CSF創出作業)・・・・・

 山田氏:ずいぶんCSFが出てきました。これらのCSFをすべて適用するわけでは
ないですよね。当事業部には到底そんな体力ありませんね。
 私  :そうでしょうね。また、現在のCSFは当事業部にとって玉石混交の状態で
すね。
     それでは歩を進めて、CSFの選定に移りましょう。
  
第84回はここで終了します。今回はCSFの創出での手順と考慮点を議論しました。
次回は、テーマ「CSFの選定1-選定ステップ」でCSFの選定を考察していきま
す。

CSFの選定1-選定ステップ

今日は昨日までのSWOT分析で創出されたCSF(=Critical Succ
ess Factor:重要成功要因)を選定がテーマと聞き伺いました。
 プロジェクトメンバーがCSFを眺め、CSFの選定を如何にすべきかを議論してい
ました。
  
 山田氏:メンバーで議論していたのですが、CSFの選定といっても、何か基準が
ないと選定できませんね。たとえば、優先付けのような。
 私  :そうですね。あるべき姿のCSFが出ていますので、事業体力に合った
CSFに絞り込むことが必要です。
そのためには、少なくともCSFの優先度が必要ですが、それ以前に選定
までの手順を捉えておくことが必要ですね。その選定の手順は「CSFの
整理」→「CSFとコアコンピタンスの関連付け」→「CSFの優先度付け
と選定」となるでしょう。
上野氏:よく分かりませんね。手順における各ステップの内容がちょっとイメージ
できません。具体的に説明いただけませんか。
私  :分かりました。順を追って説明しましょう。
     「CSFの整理」には2つの観点を留意しておく必要があります。
その最初の1つは「事業に直接結びつかない間接的なCSFと直接結びつく
CSFの整理」です。
たとえば、「ERPシステム導入による情報分析の迅速化」、「Webに
よる双方向の顧客取引情報交換のしくみ」などは事業の収益を直接上げる
     要因ではありませんが、全事業に必要なインフラのCSFです。
これを共通CSFとして区別しましょう。
     共通CSFは売上やコストに直接関係する営業活動や生産活動の裏方の
CSFですから,共通CSFの判断は直接収益を上げる要因であるか?”
 の観点でみて、そうでなければ共通CSFと判定できます。
 上野氏:共通CSFは事業施策に展開することからはずすのでしょうか?
 私  :そうではありません。共通CSFは企業の業務プロセスに絡んでいます
ので、事業部と言うより会社全体の社内の仕組みづくりとして重要なCSF
です。この仕組みづくりの施策展開され、事業施策と関連付けて実施される
ことになります。
     このため、直接事業収益を上げるCSFとして現れづらくなってきます。
     さて、もう1つは「CSFを事業別にまとめる」ことです。あるべき姿で
創出したCSFは経営ビジョンの事業をイメージしていますので、
“どの事業のCSFか”で事業とCSFを関係付けてグルーピングすること
です。
 中川氏:事業とCSFを関係付けて方針を明確にすることが出来ることは分かります
が、ほかに何かあるのですか?
上野氏:CSFは事業方針のベースになりますので、この妥当性の判断が必要になり
ますね。CSFは事業ビジョンに対する成功要因ですが、その実現可能性の
検討が必要です。
実現可能性はコアコンピタンスとの関係が必要になりませんか。
     というのは、コアコンピタンスが「同業他社より優位にある現有の経営資源
     や経営機能の能力」でしたので、関係付けることでCSFの実現可能性が
     見えませんか?
 私  :その通りです。想定したCSFにコアコンピタンスを結びつけることで、
     CSFの実現可能性が判断できます。
     ただ、CSFは3年後のあるべき姿から発想していますので、CSF実現には
     現有のコアコンピタンスに加えて、今後事業施策によって作り上げて
     いかねばならないコアコンピタンス(=今後のコアコンピタンス)が出てき
     ます。
     この今後のコアコンピタンスは今後育成するために投資することになり
     ます。この投資の大きさを判断することで実現可能性を判断できるわけ
     です。
 山田氏:現有のコアコンピタンスであれば投資はほとんどないのですが、今後のコア
     コンピタンスは経営施策の投資となっていくわけですから、今後のコアコン
     ピタンスの捉え方が重要になりますね!
 私  :そうなんです。 自社や事業部の投資能力を考慮して今後のコアコンピタン
     スを出していくことになります。その中で、事業に対し“投資が少なくリタ
     ーンが高い”と思われるCSFの優先度を高くし、そのほかのCSFを除外
     していきます。    
     さて、手順を追ってやってみましょう。
 中川氏:それでは、現在のわが事業部のIT販売・サービス事業のCSFとして創出
     しました「顧客別の24時間365日の統合ヘルプデスクができること」から
     やってみましょう。
  
 第85回はここで終了します。今回はCSFの選定ステップを議論しました。
 次回は、テーマ「CSFの選定2-コアコンピタンス」でコアコンピタンスに焦点を
 当てます。